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未知の輪郭

アメリカ / 英語

「リアル・ブレア・ウィッチ」は本当に悪ふざけだったのか フリントの浅い墓とHi8テープ。

文=B.nakamura

始まりはRedditの1本の投稿だ。「The Real Blair Witch」という失われたドキュメンタリーを探している——テレビで見た記憶はあるが、どこにも見る手段が無い。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』とは無関係の、実録犯罪もののはずだ、と。

添えられていたIMDBのページはほとんど空白だった。レビュー1件と公開年、監督名。唯一の中身はあらすじで、そこにこう書かれていた。ミシガン州フリントの若者の集団が、知り合ったばかりの女性を誘拐して恐怖に陥れ、森へ連れ出して浅い墓に投げ込む様子を自分たちで撮影した。目隠しされた被害者に最後の願いはあるかと尋ねてから喉を切る。「誘拐は本物だったのか、それともただのゲームだったのか」。

ネット記事での言及、制作会社RawTVのVimeoにあった予告編。そして約1年後、別のユーザーの書き込みで話が動く。ドキュメンタリーは実在し、しかも中身は誰の想像よりずっと奇妙だった。

『ブレア・ウィッチ』が残したもの

1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、ホラーというジャンルを変えた作品だ。3人の映像作家が古い都市伝説を記録しに行って跡形もなく消え、残された映像だけがある——脚本臭さも驚かせ方も無い作りが現実のように感じさせ、それが狙いだった。

影響は映画産業の外へ広がった。ホラーファンやアマチュアが廃墟へ入って不気味な映像を撮り始め、ネットは本物の心霊遭遇を称する低解像度の動画で埋まっていく。一世代がHi8テープに最も恐ろしいものが写りうると信じ始めれば、誰かがそれを証明しようとするのは時間の問題だった——というのが動画の見立てだ。

3月6日の夜

2002年2月、ミシガン州フリント。19歳のダニエル・テイラーが、ホラー映画を撮る夢を持つコミュニティカレッジの学生、20歳のトラヴィス・パイエアと知り合う。パイエアは同じ学生のジョン・コッカリルと家をシェアしていて、そこが仲間内のたまり場だった。

3月6日の夜、空気が変わる。彼女は不意に拘束され、目隠しをされ、手錠をかけられ、殺すと脅された。すべてが1本のHi8テープに収められている。

映像はナイトビジョンの緑の光から始まる。撮影しているパイエアが「今日が地球で最後の日だと知ったらどう言う」と尋ね、ダニエルは軽くあしらう。背後で人影が動き、目隠しらしきものを持った男が進み出た。異変を察して拒んだところで、複数の手が伸びて床に押さえつけられる。

次の場面は車内だ。後部座席で目隠しをされた彼女は怯えきっている。男の一人がナイフを押し当て、質問が始まる。良い人生だったか。家族に最後の言葉を。過去に戻れるなら何か変えるか。ダニエルは母に愛していると伝え、いろいろごめんと言い、同乗者には言うことは何も無いと告げる。誰も安心させる言葉をかけない。

森の奥では、男の一人が彼女を肩に担ぎ、一行はすでに掘ってあった深さ60〜90センチほどの穴へ向かう。パイエアがナイフを持って穴の上に立ち、目隠しが首元まで下ろされた。膝をついて刃を近づけ、そして——実際には切らない。喉を切る仕草を真似ただけで、彼女は力尽きたふりをする。

「おめでとう、君は死んだ。あの世へようこそ」。一同は笑って互いの背を叩き、カメラに向かって自己紹介し、この「映画」での役割を説明してお辞儀までした。撮影を止め、彼女の縛めを解き、反応がどれだけ現実的で面白かったかを褒めそやす。これで映画になる、フリントから出られる、と。

ダニエルにとっては違った。数分前まで自分は死ぬと思っていたのだから、笑えることは何も無い。冗談は彼女ひとりに向けられていた。

誰を信じるか

数日後、彼女は招かれてその家を再訪する。皆で「傑作」を見返す夜だった。上映が終わった後、彼女はテープをこっそり別のものとすり替えて持ち出し、その夜が終わってから警察へ通報した。

1週間のうちに5人全員が逮捕され、誘拐と暴行の容疑で裁判を待つことになる。ミシガン州法では7年から終身刑にあたる罪だ。ホラー映画を作りたかっただけだという彼らの主張に対し、ダニエルは何も知らなかったと主張し続けた。

ところが証言が出て映像が見直されると、話は一方通行ではなくなる。映像の中で彼女は、鼻をかき、ロープがきつくないか尋ね、死ぬと思っていたはずの数分後には一行と一緒に笑っている。

ラピア郡の検察官バイロン・コンシューは、彼女は最後まで演出だと知らなかったと信じていると述べた。「悪ふざけは参加者が意図したものだが、最後の一人、被害者はそれに加わっていなかった」。被告側の弁護人はこう返す。殺さないでと懇願したことが一度も無く、種明かしの後に微笑んだように見え、やめてと言ったこともない。「彼女は1分ほど死んだふりをしている。本当に生き埋めにされると思っていたなら、もがいたはずだ」。

結局これは水掛け論だ、と動画は言う。彼女が演技していたのかどうかは、検察にも弁護人にも分からない。知っているのは本人だけだ。

クリスティーナ・ラムは司法取引で重罪暴行未遂という軽い罪になり6か月、デレク・ファックスリンガーは200ドルの罰金、ジミー・カーワイルは4か月、パイエアとコッカリルは8か月。いずれも保護観察の完了を条件に執行が猶予された。

その後

パイエアは2006年4月18日、ファックスリンガーは2007年2月12日、コッカリルは2014年2月19日に亡くなっている。いずれも35歳になっていなかった。関わった4人の男のうち3人が、人生が動き出す前に死んだことになる。

死因についてネット上にあるのは伝聞ばかりだった。MyDeathSpaceではパイエアの死因が薬物によるものと推測され、MLiveの記事を参照する形でファックスリンガーはてんかん発作で亡くなり臓器提供が行われたとされた。事件の余波かどうかは、何も確定していない。

最初のRedditの投稿から1年後、彼らの友人を名乗るユーザーが現れる。デレクはシャワー中の発作、トラヴィスはひどい歯の感染症が要因の一つ、ジョンは母を亡くした後に飲酒が増えての事故的な過剰摂取。3人の死はどれも事件の重圧によるものではない、と書いている。生き残った一人とは今も時々話すが、別の州で人目につかない生活をしていて、この件で最も影響を受けたのは彼だと思う、とも。

同じ投稿は、被害者についても書いている。後に彼らへ謝り、こんなことになるとは思わなかったと言った。テープを持ち出せば冗談だったと証明できて全員が放免されると思っていたが、撮影の合間に録画が止められていたことに気付いていなかった——。彼らは毎週この種の悪ふざけを友人にしていて、裏庭で12本もホラー映画を撮っていた。1〜2週間前にも別の友人へほぼ同じことをしていて、次は撮影しようと言ったのはその友人のほうだった、とも。ただしこれは、当事者の友人による匿名の書き込みだ。裏づけは示されていない。

ダニエルは知っていたのか、それとも本当に命の危険を感じていたのか。完全なオリジナルのテープが表に出ることはおそらく二度と無い。残るのは、その問いだけだ。

視聴者の反応

  • "It was just a prank bro" The prank:

    高評価 17,070

  • It is a bit weird that so much strange shyit seems to be geographically attached to places with high lead in the water, eh?

    高評価 14,872

  • The video: "If you struggle, then you'll suffer more" The defense attorney: "There's no explanation for her not struggling!"

    高評価 6,326

  • I hate prank culture. Being traumatised, made vulnerable and recorded is not a prank. These can lead to life long paranoia.

    高評価 4,869

  • I love how these people think calling it a "prank" will make it sound less serious

    高評価 4,859

この説をたどる

最初にあるのは、IMDBのあらすじの最後の一行だ。誘拐は本物だったのか、それともゲームだったのか。テープを見れば答えが出そうに思えるのに、見れば見るほど両方に読める。押さえつけられて怯える場面と、ロープの締まり具合を尋ねる場面が、同じ1本のなかに並んでいる。検察は彼女が知らなかったと言い、弁護人は知っていたと言い、友人たちは最初から最後まで悪ふざけだったと言う。どれも、その人が見ていた位置からは正しく見えるのだろう。完全な映像はもう出てこない。あの一行の問いだけが、20年以上そのまま残っている。

動画を見る

Nexpo

動画の見どころ

  1. ほぼ空白のIMDBページに残っていたあらすじ。森の浅い墓、目隠しの被害者、最後の願いを尋ねてから喉を切る場面のあとに「誘拐は本物かゲームか」という一行が置かれている。

  2. 『ブレア・ウィッチ』の後、ネットが本物の心霊映像を称する動画で埋まっていく。一世代がHi8テープを信じ始めれば、誰かが証明しようとするのは時間の問題だったと語られる。

  3. ナイトビジョンの緑の光の中、「今日が地球で最後の日だと知ったらどう言う」と問われた直後に背後から複数の手が伸び、床に押さえつけられるまでの数分。

  4. ナイフを押し当てられた車内で「家族に最後の言葉を」と促され、母へ愛していると伝え、同乗者には言うことは何も無いと告げる場面。誰も安心させる言葉をかけない。

  5. 穴の上でナイフを近づけたあと、実際には切らずに喉を切る仕草だけをする。「おめでとう、君は死んだ」の一言で空気が一変し、一同が笑って自己紹介を始める。

  6. 上映会に招かれた被害者がテープをすり替えて持ち出し通報。1週間のうちに5人が逮捕され、州法で7年から終身刑にあたる誘拐と暴行の罪で裁判を待つことになる。

  7. 鼻をかき、ロープの締まり具合を尋ねる場面をめぐって検察と弁護人の主張が真っ二つに割れる。知らなかったのか、知っていたのか、テープからは両方に読める。

  8. 友人を名乗る匿名の書き込みが、3人の死は事件とは無関係で、最初から最後まで悪ふざけだったと反論する。裏づけは示されないまま投稿は結ばれる。

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