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都市伝説アーカイブ

陰謀論 / 地球外生命・宇宙人

3時間動かない男から辿り着いた先 気候団体を名乗るアラトラのネットワーク

文=ブライアン・ナカムラ

動かない手から始まった調査

ハワイの山火事とバーベンハイマー現象のさなか、Earth Save Science Collaborative という YouTube チャンネルが作られた。運営者はアレン・エゴン・チョラキアン。気候変動、ナノプラスチック、偽情報キャンペーンを警告する動画が180本以上ある。どの回もスーツ姿でカメラの前に座り、自分の経歴を並べたうえで、30分から3時間半にわたって地球の核の内部にある異常を語り続ける。調べてみるとそれらの主張には科学的な裏づけがほとんど無いように見える、というのが取材した側の評価だ。

取り上げる理由になったのは、手だった。一部の回でエゴンがまったく動かないことに気づいた人がいた。Facebook と LinkedIn によれば彼はハーバード、MIT、スタンフォードを出ているが、まったく同じ時期に在籍していたことになっている。検索しても本人の研究はほとんど出てこず、残るのは公人と並んだ画像ばかりで、拡大するとどれも不自然に見える。AI が人格ごと偽装できる今、これは死んだインターネット理論の最も手の込んだ例なのではないか——そう受け止められた。

実在の人物だと分かったZoom映像

ところが、パンデミック期の Zoom 通話の映像が見つかる。そこでは普通に受け答えをしていて、実在の人物であることが分かった。自分の写真を加工し実績を盛る老人が運営する陰謀論チャンネル。いったんはそこで終わりかけた。

Creative Societyへつながるコメント

引っかかったのはコメント欄だった。同じ人物が繰り返し現れ、どれもエゴンを支持し、いずれも Creative Society という組織につながっていた。そしてエゴン自身がそのサイトに載っている。Creative Society は180か国以上のボランティアが参加する国際プロジェクトを名乗り、成人全員への毎月のベーシックインカム、第一子誕生時の10万ドル、世界的な無償医療、負債と税金の撤廃を掲げる。ただし気候変動の原因は人間ではなく宇宙的な力だとしている。2022年、BBC の気候偽情報担当記者マルコ・シルバとマーリン・トーマスは、招かれた科学者の映像から人為的要因への言及を削り、彼らが同意しているかのように見せていたと報じている。

アラトラとダニロフの輪郭

記事には、サイトが「指導者はいない」と説明する一方で、実際に活動全体へ繰り返し現れる人物の名前があった。元カイロプラクターのイーゴリ・ミハイロヴィチ・ダニロフである。彼はウクライナの精神運動アラトラの中心人物としても記載されている。アラトラの動画群では、人間がテレパシーを使えると本気で論じ、人が入れるピラミッドで記号を念じて送る実験を行っている。もとは出版社で、2003年の第1作にはリグデン・ジャッポという預言者が登場する。地上での姿は武術の教師でありカイロプラクター、作中で「イーゴリ・ミハイロヴィチ」と呼ばれる場面もある。2023年8月にはウクライナ当局が20を超える拠点を摘発し、武器類と宗教文書、プーチンを祀った祭壇とトランプの帽子が見つかったが、ダニロフの姿は無かった。

最後に置かれるのが、チェコのジャーナリスト、ヤクブ・ヤールの件である。YouTube と TikTok には、彼がタンザニアで子どもを虐待したとする「ドキュメンタリー」が大量にある。だがそれを広めているアカウントの一つは、この調査の前半に出てきたものと同じだった。ヤールは2023年にアラトラを追い、ダニロフの潜伏先の一つを突き止めた人物である。チェコ政府まで捜査に乗り出し、嫌疑が晴れるまでに数年かかった。彼が語るのは自分の潔白よりも、長年支援してきた孤児院にアラトラが入り込み、もう子どもたちに会いに行けなくなったことだった。

視聴者の反応

  • "We're not a cult" -The cult 2026

    高評価 7,489

  • “we have Scientology at home”

    高評価 7,364

  • god at some point during this video i forgot this was happening irl and thought it was another arg/internet horror story, that's how insane it is

    高評価 5,092

  • Bro just woke up one day and said "let's expose a world-wide cult". W Nexpo

    高評価 3,843

  • 11:06 “it’s so nice to see actual journalism for a change” as a response to ai george washington kills me 😭

    高評価 3,290

この説をたどる

Zoom映像の不自然な手の動きから始まった疑念は、実在の人物、匿名の証言、Creative Society、アラトラへと伸びていく。点が増えるほど、単なるAI映像ではなく、組織的な情報発信の一端を見ているのではないかという像が濃くなる。動画はその輪郭を、証言と公開資料の接点から追い続ける。

動画を見る

Nexpo

動画の見どころ

  1. エゴン・チョラキアンはスーツ姿で30分から3時間半、地球の核の内部にある異常を語り続ける。調べると科学的な裏づけがほとんど無く、権威を装って裏を取られないことに賭けているように見えると評される

  2. 調査のきっかけは「手が動かない」という指摘だった。LinkedIn ではハーバード・MIT・スタンフォードに同じ時期に在籍したことになっており、公人と並んだ写真もどれも不自然だと示される

  3. AI 生成の偽人格ではないかと疑われた矢先、パンデミック期の Zoom 通話の映像が見つかる。普通に受け答えをしており、実在の人物であることがここで確定する

  4. コメント欄に同じ人物が繰り返し現れ、どれもエゴンを支持し、いずれも Creative Society につながっていた。エゴン自身もそのサイトに載っており、一人芝居ではなく集団だと分かる

  5. Creative Society は180か国以上のボランティアによる国際プロジェクトを名乗り、毎月のベーシックインカム、第一子誕生時の10万ドル、無償医療、負債と税金の撤廃を掲げる。気候変動の原因は宇宙的な力だとする

  6. 2022年のBBC記事によれば、招かれた科学者たちの映像は気候変動の人為的要因への言及を削るよう編集され、彼らがCreative Societyの見解に同意しているかのように見せられていた

  7. アラトラはもと出版社で、2003年の第1作に登場する預言者リグデン・ジャッポは、地上での姿が武術の教師でありカイロプラクター。作中で「イーゴリ・ミハイロヴィチ」と呼ばれる場面もある

  8. ジャーナリストへの中傷を広めているアカウントの一つが、この調査の前半に出てきたものと同一だった。ここから一連の告発映像が仕組まれたものだと結論づけられる

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