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未知の輪郭

アメリカ / 日本語

1.7億回表示された「人生を1日で立て直す方法」 紙とペンで始めるアンチビジョン。

文=佐々木 玲

きっかけは、Xで流れてきた一本のポストでした。タイトルは「How to fix your life in one day」——人生を1日で立て直す方法。目を引いたのは中身より先に、右下の数字だったといいます。表示回数は1.7億。日本の人口より多くの人に届いていた計算です。

投稿されたのは1月13日。みんなが新年の抱負を考えている時期に、新年の抱負なんて馬鹿げている、という一文から始まります。大半の人の抱負は、みんながやっているからやっているだけか、周りへのアピールにすぎず、自分が変わるための条件を満たしていない、というのがその理由です。100年ほど前なら呪術や魔術と呼ばれたであろう話で、構造そのものは呪術だ、と動画は言います。オカルトの言葉で語られてきたものが、いまは自己啓発の言葉で世界中に読まれている。その現象自体が興味深いのだ、と。

まず土を替える——アイデンティティの話

投稿者はダンという、アメリカ出身の現代の哲学者です。YouTubeの登録者は127万人。もともとは企業でデザインの仕事をしていて、燃え尽きて会社を辞めています。「努力もスキルもあった。でも人生は良くならなかった」というのが当時の振り返りだそうです。そこから生産性、習慣化、モチベーションという正しそうな言葉に疑問を抱き、哲学や心理学を学んで発信を始めました。

彼が最初に否定するのは、行動から目標へ向かうという順番です。それではうまくいかない。理由は、アイデンティティが貧弱だから。自我が今までと同じ状態のまま行動や習慣だけを変えようとするのは、腐った土の上に大きくて太い木を育てようとしているようなものだといいます。だから最初にやるべきは、土にあたるアイデンティティを編集することです。

理想的な生活を送っている人を思い浮かべてみてください。経営者でも、ボディビルダーでも構いません。彼らはストイックな生活を我慢して続けているのではなく、その生き方しか考えられないと思っている——動画はそう説明します。自分像があり、そこから行動が出て、ライフスタイルができる。この順番です。世の中の大半の人は逆で、行動から始めてライフスタイルにし、いつかアイデンティティになることを期待している。だから外からの強制がないと続かないのだ、と。

変われない本当の理由は、恐怖

ここから話は一段深くなります。理想の生き方ができない隠れた理由は、本当はそこへ行きたくない、そうなることを恐れているからではないか。何かを初めて形にした瞬間、自分の才能や実力は評価される土俵に乗ってしまいます。挑戦しなければ保てたはずの自信が、挑戦したことで砕かれる。多くの人が10代で一度は味わい、その記憶を抱えたまま大人になっています。

だから私たちは、本当は恥をかきたくないだけなのに、リスクが高いとか、向いていないとか、もう若くないとか、別の話に置き換えて変わらないことを正当化してしまう。動画はそう指摘します。ここで持ち出されるのが闘争・逃走反応です。危険に際して戦うか逃げるかを選ぶこの反応は、アイデンティティが脅かされたときにも起きるとされる。政治・宗教・野球が昔からタブーと言われるのも、それらがアイデンティティと深く結びついているからだといいます。選挙の時期にSNSで強い言葉が飛び交うのは、書き込んでいる人が命の危険と同じレベルの意識状態にあるからで、似た思想の人だけの場所に閉じこもるのも、心を守るための行動なのだ、と。

知性とは、望むものを手に入れる力

構造の話に入ります。精神にはレベルがあり、多くの人が望む豊かな人生は、ある程度成熟した精神レベルの中に存在している。まずやることは、自分の現在地を知ることです。

そこで出てくるのがサイバネティクスという言葉。意味は舵取りで、船の舵を操作する人を指します。ダンはシリコンバレーの思想家の言葉を引きます。「知性の唯一の本物のテストは、人生から望むものを手に入れているかどうかだ」。この定義でいけば、IQや学歴が高くても望むものを得ていないなら知性が高いかは疑問が残り、勉強ができなくても得ているなら本物の知性ということになります。

では舵取りとは何をすることか。目標を持ち、行動し、自分の現在地を正しく感知し、目標と比べ、そのフィードバックでまた動く。その繰り返しです。途中には必ず失敗も、予測不可能なカオスもある。そこから逃げずに受け入れて進化していくことを、ダンは知性と呼んでいる、というのが動画の読みです。

1日でやること——紙とペンとオープンな心

実践編で使う時間は1日、用意するのは紙とペンとオープンな心だけです。作業の名前はアンチビジョン。なりたい自分をリアルに思い描くのではなく、絶対に行きたくない人生のほうを先に定義します

午前中に15分から30分。今耐えていることは何か。繰り返し不満を言いながら変えていないことは何か。尊敬している人には見せられない自分の真実は何か。さらに、5年後も何も変わらなかったとして、その日の朝どう目覚めて夜10時に何を感じているか。人生の終わりに、変わらなかった結果として何を失ったか。かなり苦しい時間になります。

そこで角度が変わります。実現可能性を無視して、3年後にどんな人生でも選べるとしたら何を選ぶか。その人生が自然に感じられるには、どんな自分になっている必要があるか。もう自分がその人だとして、今週やるたった1つは何か。午後は似た質問をスマホのリマインダーに入れて、その時刻に見て頭の中で反芻するだけ。夜は4つの質問でまとめます。なぜ自分は停滞していたのか。本当の敵に名前をつける——環境や他人ではなく、自分を支配してきた内側のパターンに。絶対にこうさせないという内容と、これから作ろうとしているビジョンを、それぞれ一文で。

最後に、1年後どうなっていたら古いパターンを壊せたと確信できるか、そのために1か月後はどうなっている必要があるか、そして明日やる2〜3のアクションを決めます。ここまで終えたら、チュートリアルは終了です。アンチビジョンが敵、明日やることがクエスト、1か月後の目標が中ボス。あとは毎日を進めていくだけになります。

語り手自身、中学生か高校生の頃から自分を漫画の主人公のように捉えて生きてきたと振り返ります。降りかかる不幸も災難も、主人公が成長するためのきっかけなのだ、と。完璧にできなくても大丈夫。孤独と向き合う時間を作れた1日は、それだけでかけがえのない1日になりうる、というのが結びです。

視聴者の反応

  • 自分は昨日天中殺抜けて、これが1本目の動画になります!同じ辰巳天中殺の皆さん、お疲れ様でした! ぜひあなたが”自分の中にいる敵に付けた名前”をコメント欄に書いていってください。 ちなみに僕は”しゃばぞう”です

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  • 引き寄せの法則が上手くいかないのは「望む現実の方を動かして」自分側に手繰り寄せようとしているからだと、この前気づいた。 必要なのは、望む現実に向かって「自分が動く」こと。自分が近づいていくこと。 その歩いていく道を見つけたい自分にとって、この動画はとても為になりました。 ありがとうございます!

    高評価 296

  • 休日にカメラ持って散歩するようになってから人生楽しくなってきた。 平日は仕事を定時で上がるようにして、好きな本を読みながら夜を過ごしつつ、12時前には寝るようにしたのも効果的だったかも。

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  • 「メンドークサイ」 もう、ほんとこれ! 全てが「めんどくさい」で後回し。 これさえやっつけたら、無敵やと思う!😂

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  • ミルクティさんの更新嬉しい

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背景

この回に出てくる言葉を、もう一度だけ並べておきます。アンチビジョンは、なりたい自分ではなく、絶対に行きたくない人生のほうを先に定義する作業です。サイバネティクスは舵取りを意味する言葉で、目標を決め、動き、現在地を測り、ずれを見てまた動く——その繰り返しを指します。闘争・逃走反応は、危険に際して戦うか逃げるかを選ぶ反応のことで、動画はこれが命の危機だけでなく、アイデンティティが揺らいだときにも起きるとされる、と説明していました。政治や宗教の話が荒れやすいのも同じ理由だといいます。なお、7つのアイデアはあくまで1本のポストが出どころで、精神のレベルを示す表も動画が独自に整理したものです。

動画を見る

ミルクティー飲みたい

動画の見どころ

  1. Xで見かけた「How to fix your life in one day(人生を1日で立て直す方法)」というポストの表示回数が1.7億に達し、日本の人口より多い数字だったことが取り上げるきっかけになったと語られる。

  2. 1月13日に投稿されたそのポストは「新年の抱負は馬鹿げている」から始まり、大半の抱負は周囲へのアピールにすぎず自分が変わるための条件を満たしていないと指摘する。

  3. 行動から目標へ向かう順番ではうまくいかない、自我が同じままで習慣だけを変えるのは腐った土の上に太い木を育てるようなものだ、と説明される。

  4. 理想的な生活を送る経営者やボディビルダーは、ストイックさを我慢しているのではなくその生き方しか考えられないと思っているのだ、という見方が示される。

  5. 政治・宗教・野球がタブーとされるのは、それらがアイデンティティと深く関わり、否定されると冷静でいられなくなるからだと説明される。

  6. 「知性の唯一の本物のテストは、人生から望むものを手に入れているかどうかだ」という引用から、IQや学歴と知性を切り離して考える見方が示される。

  7. 制限を外すのに必要なのは1日と紙とペンとオープンな心だけで、なりたい自分ではなく絶対に行きたくない人生を定義する「アンチビジョン」の作業が紹介される。

  8. 夜のまとめとして、停滞の理由、環境や他人ではなく内側のパターンである「本当の敵」への命名、絶対にこうさせない内容とビジョンを一文ずつ書く4つの質問が示される。

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