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未知の輪郭

検証人工地震 / 陰謀論

みんながHAARPを疑っていた10年で 太陽を遮る会社が110億円を集めていた

文=B.nakamura

HAARPが疑われ続けたあいだに、天気を人の手で変える計画は実際どこまで進んだのか。

20年疑われてきた施設は、10年前に軍の手を離れていた

当サイトの記事は、別々の動画を扱いながら同じ事実に触れている。HAARPは2015年以降アラスカ大学フェアバンクス校が運用する施設で、行われているのは公開された科学研究だ。電離層を加熱して基礎データを得る研究プロジェクトであり、施設は一般公開イベントまで開いている。

運用者の説明も同じことを言っている。研究の申請は誰でも出せて、実験の記録は公開され、来訪者を受け入れる日が設けられている。

20年にわたって疑われてきた場所へ、いまは誰でも見学に行ける。兵器説が生まれた土台は、この施設が軍の管轄で始まり一部の研究が機密扱いだったことにあると記事も指摘している。その土台のほうが、10年前に消えていた。

空に粒子をまく実験は、2024年に大学の手で止まった

当サイトの記事は、ハーバード大学がスコペックス(SCoPEx)という小規模な実験を計画し、先住民の反発を受けて2024年に中止が決まったと伝えている。

記録を当たると、その経緯はもう少し重い。成層圏に反射性の粒子をまいて気温を下げられるかを試すこの計画は、2021年にスウェーデンでの機材試験を取り下げた時点で失速し、2024年3月に主任研究者が計画から降りて終わった。反対したのは環境団体だけではなく、実験予定地に暮らすサーミ人を代表するサーミ評議会だった。

つまり、空へ粒子をまく実験は「危険すぎる」という理由で、大学が自ら降りた。この節は判定ではなく、次に見る話の前提として置く。ここまでが公の場で起きたことだ。

降りたのは大学だけだった 同じ技術に110億円

当サイトの記事は、イスラエル系の民間企業スターダスト・ソリューションズを名指しし、約7500万ドルを調達して2026年4月以降に屋外テストを始めていると書いている。出資者にはモサドや防諜機関のシャバックもいる、とも書く。

公開記録で確かめられたのは、その骨格までだった。

記事の記述記録で確かめられること
約7500万ドルを調達総額7500万ドル(約110億円)。うち6000万ドルの一巡はSRM分野で史上最大
2026年4月以降に屋外テスト改造した航空機から粒子を放出する屋外実験を2026年4月にも計画
出資者にモサド・シャバック出資元のひとつ Awz Ventures がイスラエルの軍・情報機関と強い結びつきを持つファンド
すでに天候を左右している確かめられない。実験はこれから

中核は当たっていた。2023年初めにイスラエルの物理学者らが設立した企業が、大学が降りたのと同じ技術で、この分野で前例のない資金を集めている。

ずれているのは二つ。出資者は情報機関そのものではなく、その界隈と結びついたベンチャーファンドであること。そして「すでにやっている」ではなく「これから始める」段階であることだ。後者の違いは小さくない。すでに起きたことなら追及の対象だが、これから起きることは、まだ誰かが止められる。

気象兵器を禁じた条約は、この計画には届かない

この条約は当サイトの記事で二度、正反対の使われ方をしている。一方は「禁止する条約があるのだから兵器は実在する」という論法があると紹介し、もう一方は第3条に抜け道があると指摘する。

条文に当たると、後者のほうが実態に近い。環境改変兵器禁止条約(ENMOD)が禁じているのは、環境改変技術の敵対的な使用であって、技術そのものではない。第3条第1項ははっきりこう書いている——この条約の規定は、平和目的のための環境改変技術の使用を妨げない。

さらに第3条第2項は、締約国が平和目的の環境改変技術について科学技術情報を最大限に交換することを約束するとまで定めている。禁止どころか、平和目的なら協力を促す条文だ。

つまり気候対策を掲げた民間の成層圏実験は、この条約の対象外になる。「条約があるから安心だ」も「条約があるから兵器は実在する」も、どちらも条文を読んでいない。止める枠組みが無い、というのが条文どおりの答えになる。

HAARPの名前が挙がるのは、いつも何かが起きたあと

当サイトの記事に現れるこの説の対象を、起きた順に並べる。

出来事そのとき持ち出された材料
2006フィリピンの地震事後に説として紹介
2010ハイチ地震事後に噂として流通
2011東日本大震災電離層の異常と結びつけ
2023トルコ・シリア地震地震前の光や雲の映像
2024能登半島地震前日に届いた太陽フレア
2026熊本地震放射線監視装置の停止

発信元の違う動画が同じ地震を同じ順序で挙げる点は、記事をまたいで一致する。並べて見えるのは、材料が毎回その出来事に固有のものへ入れ替わっていることだ。トルコでは空の光、能登では太陽フレア、熊本では監視装置。共通しているのは施設の名前だけで、根拠は現地調達されている。

2023年の例は「地震の前の映像」だが、それが証拠として持ち出されたのは地震のあとだった。この説が何かの前に特定の場所を指したという記述は、当サイトのどの記事にも無い。前の節で見た110億円の計画のほうには、実行前の日付が付いていた。確かめられる予定はそちらにあり、名前が挙がるのはこちらだった。

突き合わせて言えたこと

  • 複数の記事が一致20年疑われてきた施設は、10年前に軍の手を離れていた

    いまHAARPを運用しているのは誰で、そこで何が行われているのか。

  • 前提の整理空に粒子をまく実験は、2024年に大学の手で止まった

    太陽光を遮る技術は、公の場でどこまで進んで、なぜ止まったのか。

  • 記事どうしが食い違う降りたのは大学だけだった 同じ技術に110億円

    大学が降りたあと、この技術を引き取ったのは誰か。

  • 記事どうしが食い違う気象兵器を禁じた条約は、この計画には届かない

    「気象兵器は条約で禁止されている」は、いま何を禁じているのか。

  • 複数の記事が一致HAARPの名前が挙がるのは、いつも何かが起きたあと

    この説は、何かが起きる前に一度でも場所を指したことがあるのか。

参考記事

参考資料

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