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エッフェル塔を売り、フェルメールを描いた 歴史に名を残した知能犯6人をたどる

「ドラマに出てくるような知能犯は実際にいるのか」。視聴者から届いたその質問に、語り手は「山のようにゴロゴロいる」と答えて6人を挙げていく。手口も時代も国も違うが、並べると共通するものが見えてくる。
天才詐欺師の経歴が、まるごと疑われている
1960年代のアメリカ。家出した16歳が、父から渡されたクレジットカードで買っては返品して現金に変えるところから始まる。やがて当時の銀行窓口に置かれていた白紙の預金伝票へ目をつけた。束を持ち帰って口座番号欄に自分の番号を印刷し、こっそり戻す。その伝票を使った他人の振込金が、自動的に自分の口座へ入る。 誰も気づいていなかった穴だった。
パイロット、小児科のチーフレジデント、大学教員、弁護士。5年間で8つの偽名を使い26か国を渡り歩いたとされる男は、21歳でフランスに捕まり、出所後はFBIに協力する詐欺対策コンサルタントになる。2002年にはスピルバーグ監督・ディカプリオ主演で映画化された。フランク・アバグネイル・ジュニアである。
ところが2020年、ジャーナリストのアラン・シー・ローガンが『地球上で最大のペテン』でこの経歴を洗い直し、大半は嘘だった可能性が極めて高いと主張した。FBIに追われて逃げ回ったとされる期間、彼はほとんど刑務所の中にいた。実際にやったのは短期間パイロットの格好をしたことと、交際を迫った客室乗務員の実家で小切手を盗んだことだったという。映画でも有名な司法試験合格も、弁護士協会が全記録を調べたが本名でも偽名でも受験の記録が無かった。1978年に検証記事は出ていたが、ネットの無い時代で広まらなかった。本当にやった最大の詐欺は、伝説の詐欺師だという神話を作り一生それで食べたことではないか——語り手はそう置く。
塔を売り、贋作で英雄になる
1925年のパリでは、政府高官を名乗る男がスクラップ業者を高級ホテルに集め、エッフェル塔を解体するので入札してほしいと告げた。維持費が高く景観を損ねるという世論が実際にあり、そこを突いた。落札額は現在の価値でおよそ1億5000万円。被害者は恥ずかしくて警察に届け出なかった。 ヴィクトル・ルスティグ、少なくとも45個ある偽名の1つである。彼はアル・カポネから5万ドルを預かって銀行に寝かせ、2か月後に「取引がだめになった」と全額返しに行って、感心されて1000ドルを受け取ってもいる。最初から褒美を引き出すのが目的だった。
1930年代のオランダには、腕は確かなのに写実的な画風が時代遅れとされて評価されない画家がいた。評論家の目が節穴だと証明するため、フェルメールの未発見の宗教画を自分で描くことにする。17世紀の顔料を再現し、古いキャンバスを入手し、オーブンで焼いてひび割れを作る。6年かけた1枚は、フェルメール研究の第一人者が鑑定書にサインし、美術館が現在の数億円で買い上げて目玉として展示した。戦中にはナチス幹部ゲーリングがその1枚に目をつけ、略奪した本物の名画と交換していく。
戦後、経路をたどられたハン・ファン・メーヘレンは国家反逆罪で逮捕される。このままでは死刑だった。6週間黙秘したのち「あれは自分が描いた贋作だ」と告白し、信じない捜査官の前でフェルメール様式の新作を実際に描いてみせた。世論は一変し、刑は禁錮1年で済んでいる。
動機が金ではない人たち
2000年代のアメリカでは、侵入テスト技術者としてシリコンバレーに出入りし、FBIの捜査にも協力していた男が闇へ落ちる。「アイスマン」の名でカード番号売買のフォーラムを運営し、盗んだ番号は約200万件、被害額は日本円で約100億円にのぼった。ただ本人は金にほとんど関心が無かったという。掲示板に「スキルがない」と書かれて激高し、ライバルの闇マーケットを2日で全部潰してユーザーごと自分のサイトへ移した。動機は承認欲求だけだったとされる。
日本では、トヨタグループと無関係でありながらその名を冠した会社が、金の現物を渡さず紙の証券だけを売った。営業拠点に積まれた延べ棒はすべて偽物だったという。高齢者の家に上がって仏壇に線香をあげ、身辺の世話をし、息子だと思ってくださいと言って契約を取る。設立から4年で約2000億円、被害者は数万人にのぼった。
1985年6月、逮捕情報を聞きつけた報道陣が自宅前に集まるなか、男2人がカメラの回る前で室内へ押し入り、会長を刺殺する。2000億円を集めた男の所持金は711円だった。 資金の大半は本人の取引の失敗と会社の損失で消えており、流れの真相は本人の死とともに分からなくなった。
最後は規模で群を抜く。ナスダックの会長まで務め、政府から意見を求められる立場にあったバーナード・マドフが、1920年代に確立されたポンジ・スキームを25年以上回し続けた。被害はおよそ7兆円、130か国4万人。公認不正検査士が2000年と2005年にSECへ通報し、29項目の兆候まで挙げていたが、当局は違反を発見できないとした。発覚したのは2008年、リーマンショックで解約請求が殺到したときだった。
視聴者の反応
「抜群に面白かったです。キャッチミーイフユーキャンは原作読むほど好きだったのですが、全部嘘とかびっくりしましたw」
高評価 132
「ドラマだから面白いカッコいいで完結するけど、実際に被害に合ってる人がいると思うと何とも言えないよね、、」
高評価 94
「何かここまでくると驚きを超えて感心してしまう」
高評価 91
「メーヘレンだけは正直同情できる😅 誰かを傷つけたわけでもないし……」
高評価 71
「凄い詐欺師だという経歴を作り上げる詐欺ってエグすぎ😅」
高評価 67
この説をたどる
6人を並べ終えて残るのは、手口の巧妙さより「誰が保証していたか」という一点だ。白紙の預金伝票は銀行が置いていたし、贋作に署名したのは研究の第一人者だった。エッフェル塔の解体は世論が半ば望んでいたし、紙の証券は「金は自宅に置くと危ない」という常識に乗っていた。マドフに至っては、疑うべき当局が2度の通報を受けながら違反を見つけられないと答えている。
どの手口も、単独では成立していない。信用を発行する側がそこにいて、その信用に寄りかかることで初めて動く。アバグネイルの件が示すのはさらに一段先で、騙りの中身すら要らなかったという可能性だ。テレビが語らせ、本が売れ、映画が作られ、そのたびに神話は補強されていった。検証記事は1978年に出ていたのに、届かなかった。
そう見ていくと、6人が突いたのは金庫でも回線でもなく、その時代がどこに信用を置いていたかという配置そのものになる。動画が最後に「まだまだ紹介できないくらい詐欺師は存在する」と付け加えるのは、その配置がいまも同じ形で残っているからだろう。
動画を見る
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動画の見どころ
当時の銀行窓口には口座番号欄が白紙の預金伝票が置かれていた。束を持ち帰って自分の口座番号を印刷し戻せば、その伝票を使った他人の振込金が自分の口座へ入る。この穴を16歳が見つけたとされる
2020年の著書『地球上で最大のペテン』が経歴を洗い直し、逃亡していたとされる期間ほとんど刑務所にいたと主張。実際は短期間パイロットの格好をし、客室乗務員の実家で小切手を盗んだのが真相だという
映画でも有名な司法試験合格について、ルイジアナ州弁護士協会が全記録を調べても本名でも偽名でも受験の記録が無かった。1978年に検証記事は出ていたが、ネットの無い時代で広まらなかった
1925年のパリで政府高官を名乗る男がエッフェル塔の解体入札を持ちかけた。維持費と景観をめぐる実際の世論に乗った手口で、落札額は現在の価値で約1億5000万円。被害者は恥じて届け出なかった
アル・カポネから5万ドルを預かって銀行に寝かせ、2か月後に「取引がだめになった」と全額返しに行く。感心されて1000ドルを受け取った。最初から褒美を引き出すのが目的だったと説明される
17世紀の顔料を再現し古いキャンバスを入手し、オーブンで焼いてひび割れを作る技法まで編み出して6年。完成した1枚に研究の第一人者が鑑定書を出し、美術館が現在の数億円で買い上げて展示した
国家反逆罪で死刑が見えた段階で「あれは自分が描いた贋作だ」と告白。信じない捜査官の前でフェルメール様式の新作を実際に描いてみせ、報道を受けて世論が一変した
公認不正検査士が2000年と2005年の2度、マドフはポンジ・スキームだとSECへ通報し、29項目の兆候まで挙げていた。当局は違反を発見できないとし、発覚は2008年の解約殺到まで遅れた
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