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未知の輪郭

英語 / 災害・事故

モロッコの埋葬、マダガスカルの毒サメ、ホディンカの惨事 3つの「解決策」。

文=久世 理央

自分の抱える問題の解決策を見つけたと確信しながら、実は間違っていた人たちがいます。そしてその結果に、本人以外の誰かが直面することになる。今回の番組は、そういう物語を3つ並べていきます。

その穴を掘ったのは、疑われないためだった

2014年5月19日の深夜、モロッコのフェズ市。ユセフという青年が、自宅の裏で必死に土を掘っていました。掘っている穴のすぐそばには、女性の遺体が横たわっています。

彼女の名前はミナ。フランスに住んでいて、二人はオンラインで知り合い、数か月にわたって連絡を取り合っていました。そしてその朝、ミナは初めて直接会うためにモロッコへ飛んできたのです。食事は和やかに進み、ほとんどの時間、二人は笑い合っていたといいます。ところがその最中、ミナの表情が変わり、突然床に倒れ込みました。駆け寄ったユセフは、ただ倒れたのではないと判断します。

混乱のなかで彼の頭にあった考えは、ひとつだけでした。誰もが自分が殺したと思うだろう。会いに来た直後に突然死んだという話を、警察が信じるはずがない。実際に何が起きたかを裏づけられる目撃者もいない。最善でも長く勾留され、最悪の場合は犯していない殺人で有罪になる——そう感じたユセフは、隠すしかないと決めました。近所の様子をうかがいながら掘り進め、遺体を穴へ入れて土をかけます。

その後の数日は、眠ることも仕事もできませんでした。そしてある朝、玄関に2人の警察官が立っていました。ミナの失踪事件の捜査だと聞いた彼は、その名前は知らないと答えますが、自分の声からにじむ不安に自分で気づきます。警官の一人が身を乗り出して言いました。家族によれば、最後の会話で彼女はあなたに会いに行くと話していた、と。行き先を知る人がいる可能性を、彼は考えていなかったのです。

ユセフは泣きながらすべてを話し、解剖すれば無実が証明されると懇願しました。そして検死の結果、警察は彼の話が真実だったことに驚きます。ミナは未診断の糖尿病を抱えていて、極めて高い血糖値のために倒れていました。倒れた原因について、彼に責任はなかったのです。

ただ、彼が固く信じていたことのうち、ひとつだけ間違いがありました。ミナは死んでいなかったのです。糖尿病性昏睡の状態で、埋められた時点ではまだ生きていました。検死が示したのは、土に埋められた後の窒息死。殺人罪を避けようとした結果、殺してしまったことになります。ユセフは過失致死罪で起訴されました。

一生に一度の大物が、街を病院へ運んだ

1993年11月28日、マダガスカルの港町マナカラ。何百人もの地元客でごった返す屋外の魚市場で、漁師のダニエルが露天商と値切り交渉をしていました。その朝の網に、体長約1.8メートルのオオメジロザメがかかっていたのです。乗組員が1か月で稼ぐ額より高く売れる、と彼は確信していました。

交渉がまとまり、ダニエルは人生で一度に手にした最高額の現金を受け取ります。その夜、家族は代金の一部で祝いの食卓を囲み、叔父が長い乾杯の挨拶をしました。彼は家族で一番若い漁師で、この漁は大きな意味を持っていたのです。

約6時間後、ダニエルは汗だくで目を覚まします。舌がしびれ、口の中に金属のような味がして、足もしびれていました。水を求めて飲むと焼けるように痛み、なぜ熱い茶を持ってきたのかと叔母を怒鳴りつけます。叔母が持ってきたのは、ごく普通の室温の水でした。

運ばれた病院は、同じ症状の患者で埋まっていました。手足のしびれ、頭痛、錯乱。そして、冷たいものが耐え難く熱く感じ、熱いものが冷たく感じるという訴えです。原因が分からないまま患者は次々と昏睡に陥り、数十人ずつ亡くなっていきました。

外部から呼ばれた調査チームが感染の広がりを遡ると、行き着いたのは魚市場と、ダニエルでした。彼の言い分そのものは正しかったのです。ただ、サメを価値あるものにしていた巨大さこそが、危険の原因でもありました。サメは死ぬまで成長し続けるため、大きい個体ほど長く生きた証です。その長い年月のあいだに、この個体はシガトキシンという物質を大量に溜め込んでいました。特殊な藻類が作る化学物質で、魚が藻類を食べ、その魚をサメが食べることで濃くなっていきます。人がその肉を食べるとシガテラ中毒を起こし、あの奇妙な温度の逆転が起きるのです。

肉は市場で何百人にも売られました。合計で約500人が体調を崩し、188人が入院、98人が死亡。番組によれば、記録に残るホホジロザメの襲撃による死者を全部合わせた数より多い犠牲者を、この一匹が出したことになります。

父と同じにすれば、間違いないはずだった

1896年5月初旬、モスクワの宮殿。戴冠を数週間後に控えたニコライ・ロマノフが、顧問の報告を不安そうに聞いていました。ロマノフ家は300年ロシアを統治してきた家系で、父はつい最近亡くなったばかりです。

問題は、ニコライが国を率いることを何も知らなかったことでした。読書と妻との散歩を好む物静かな人で、父は彼をこの瞬間のために準備させていません。幼い頃から宮殿の外へほとんど出たことがなく、自分が統治する国の大部分を見たことすらありませんでした。

決めなければならないことの多さに圧倒された彼は、そこで名案を思いつきます。13年間statistics統治した父の戴冠式を、そのまま再現すればいい。同じ場所、同じ料理、何もかも同じに。顧問の質問を遮ってそう指示し、彼は安堵のため息をついて、読書と散歩の日々に戻りました。

主催者は言われたとおりにしました。会場はモスクワ郊外のホディンカ広場。同じソーセージとパン、記念カップを配る屋台が並び、同じ音楽家が演奏する手はずまで整えられます。

5月30日の早朝、記者ウラジーミル・ギリャロフスキーが取材のため群衆をかき分けていました。行事が始まる前から、幅1マイル以上の敷地はすでに何十万人もの人で埋まっています。父の戴冠式のときは、これほどではなかったはずでした。

ニコライが気づかなかったのは、自分が受け継ぐロシアが父のロシアと違うことでした。当時の国は飢餓状態にあったのです。無料の食事が配られるという告知に、50万人もの人が押し寄せました。皇帝を見るためではなく、食事を求めて。

やがて、食べ物が尽きかけていると誰かが叫びます。その言葉は群衆に次々と伝わり、それまで落ち着きのなかった人々が一斉に同じ方向へ動き出しました。記者が周囲のエネルギーの変化を感じた直後、悲鳴とパニックが広がり、彼自身も押しつぶされて身動きも呼吸もできなくなります。何時間も押し合いが続き、この広場で約1300人が窒息死または踏まれて亡くなりました。

生き延びた記者は、惨状を詳細に記した記事を書きました。メディアは責任をニコライに帰し、父を真似ることで高めようとした評判は、始まる前に崩れ去ります。以後、人々は彼を「血まみれのニコライ」と呼びました。そして皇帝になってから22年後、革命家のグループがニコライ2世と家族を殺害し、ロシアの君主制は終わりを迎えます。

視聴者の反応

  • I pray I never fall ill and collapse in the same room as a stupid person🤦🏾‍♂️

    高評価 1,213

  • If someone passed out and collapsed in my home my first thought would not be to bury them in my backyard 🤦‍♀️

    高評価 909

  • If someone unexpectedly drops dead and your concern is that people will think you done the blag, literally the worst move you can make is bury the body in your garden.

    高評価 752

  • Stories like the first one is where "criminally stupid" have a more literal definition

    高評価 506

  • 8:50…he’s not going to prison because he’s dangerous, he’s going to prison because his stupidity is so severe, it can hurt people!

    高評価 413

背景

3つの話に出てくる言葉を補っておきます。糖尿病性昏睡は、血糖値が極端に高くなったり低くなったりして意識を失う状態のことで、外から見ると死亡と区別がつきにくい場合があります。シガテラ中毒は、藻類が作る毒素が食物連鎖で魚に蓄積し、それを食べた人に起きる食中毒です。手足のしびれや、冷たいものを熱く感じる温度感覚の逆転が特徴として知られています。ホディンカは、モスクワ郊外にあった祝賀行事の会場で、1896年の戴冠式に伴う群衆事故の名で歴史に残りました。なお、番組は3つとも実際の出来事として語りますが、資料の出典までは示されないので、そこは確かめながら見るのがよさそうです。

動画を見る

MrBallen

動画の見どころ

  1. 2014年5月19日の深夜、モロッコのフェズで青年が自宅裏の土を掘り、その穴のすぐそばに数時間前までデートしていた女性の遺体が横たわっていたと語られる。

  2. 会いに来た直後に突然死んだという話を警察が信じるはずがなく目撃者もいないため、誰もが自分が殺したと思うだろうと考えて隠蔽を選んだ経緯が語られる。

  3. 検死で未診断の糖尿病による高血糖が原因と判明する一方、彼女は死んでおらず糖尿病性昏睡で、埋められた時点ではまだ生きていたと明かされる。

  4. サメは死ぬまで成長し続けるため大きい個体ほど長生きで、その年月のあいだに藻類由来のシガトキシンを大量に蓄積していたと説明される。

  5. 一匹のオオメジロザメで約500人が体調を崩し188人が入院、98人が死亡し、記録に残るホホジロザメの襲撃による死者の合計を上回ったとされる。

  6. 決めることの多さに圧倒されたニコライが、13年前の父の戴冠式を同じ場所・同じ料理でそのまま再現させればよいと思いつき、顧問の質問を打ち切る。

  7. 受け継いだロシアが飢餓状態にあることに気づかず父と同じ無料の食事の告知を出した結果、50万人が皇帝ではなく食事を求めて押し寄せたと説明される。

  8. 食べ物が尽きると叫ぶ声が群衆に伝播して露店への殺到が起き、この広場で約1300人が窒息死または踏まれて死亡したと語られる。

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